チネチッタ『ガールズバンドクライ』一挙上映を観てきました
2024年9月7日(土)に開催された、『ガールズバンドクライ』アニメ全話一挙上映会に参加してきました。
会場は川崎の映画館、チネチッタ。一番よくいく映画館です。ジムや買い物の関係で、月に10回以上は訪れる、まさに「地元」ってエリアですね。
川崎の街中にポスターが貼られていた『ガールズバンドクライ』、地元が舞台なのは把握しつつも、恥ずかしながら全く見られていなかったので、これ幸いと見てきました。
映画館の音響で、LIVE ZOUNDで観るガールズバンドアニメ、いいですね……。
『ガールズバンドクライ』あらすじ
17歳の元女子高生、井芹 仁菜(いせり にな)は、いじめをきっかけに退学した自分が「間違っていない」と証明するために、熊本から東京にやってきた。でも、東京のつもりでやってきたのは、東京に近い神奈川の川崎だった。
乗り換えに迷いまくり深夜になったことで、引っ越し初日に新居の鍵を入手できなかった仁菜は、いじめられた自分を救ってくれた曲の作曲者、河原木 桃香(かわらぎ ももか)と出会う。聞けば桃香は、所属していたガールズバンド『ダイヤモンドダスト』が「かわいらしさ」を全面に出したことを忌避して脱退した際、その曲の権利も譲ってしまったのだという。
「私は間違ってない」「桃香さんも間違ってない」と証明するため、仁菜はいつしか音楽にのめり込み、新たな仲間と衝突を繰り返していく。
(あらすじは今井によるもの)
『ガールズバンドクライ』初見感想
ガルクラの圧倒的『川崎』濃度
あまりに「いつもの」風景がガンガン出てくることに驚きました。
聖地は、まとめられている方がいますね。こちらのツアー、私もやってみようかな。
オープニングの桃香さん登場シーンが銀柳街なのは、前後半合間の休憩中に、こちらの記事をみて気付きました。
DICE前だ!
西側のあの陸橋だ!
ラゾーナだ!
ラゾーナの島村楽器だ!
たまに走ってる公園だ!
矢向駅なら肉のハナマサが安いよ!
旧ウェアハウス近くのガード下だ!
そして、いつも行ってる近所の吉野家だー!!
春にこのポスターを見て、「放送中のガルクラって、この辺でロケハンしてるんだ」と思ったものです。
てっきり「川崎駅周辺の、どっかの吉野家が登場したよ」とか、「この店が、一回登場したよ」くらいだと思うじゃないですか。
まさか、あんなにも足しげくみんなが通っていて、バイトもバンドのメンバーになるほど縁の深い店舗だとは。
だいたいが自宅から半径2キロに収まってそうなアニメ、楽しかったです。
『狂犬』仁菜は、本当に狂犬でした
私がガルクラの情報を得ていたのは、Xに流れてくるイラストでした。
この手の作品を見るに、仁菜はなにかと他の人に噛みついてるんだろうなと。
実際、噛みつきまくってましたね。
すばるから「正論モンスター」と言われてましたが、特に冒頭の仁菜は、一つ一つの主張は正論ながら、相手の事情も考えられていないし知識も浅い、単なる幼稚な「噛みつき」ばかりだったと感じています。
割と迷惑な「噛みつき」なのだけど、一応は善意や正義感に由来しているから、視聴者としてはギリギリ、そこまで不快感はない、応援はしたくなるという、とてもうまいバランスだったのではないかと思います。かわいい。
(お話の進行に従って、マイルドになってましたね)
ルパさん、人気なのもわかるわ
ベース担当のルパさん、休み時間にXで検索したら、「好き」という感想が目立ったように感じました。
前半時点ではそこまでキャラクターが見えていなかったのでよくわかりませんでしたが、後半を見て納得。
基本的に人格者で、まわりの喧嘩を面白がる包容力があり、酒飲みで、胸が大きい。
これは、おじさんオタクが好きになっちゃう奴……。
私は、ビジュアル的に桃香さんが好きでしたね。
日本アニメのキャラデザが、米国CGアニメみたいな動き方をしている
CGらしいキャラクターの動きには、最後まで多少違和感がありました。
「PIXARっぽいな」「どこがやねん」という自問自答が、最後まで止まらないくらい。
『スパイダーバース』で、ペニー・パーカーを見た時の印象を思い出しました。
『ガルクラ』はおもしろいんだけど、オタクからすると後ろめたい
そんな感じで、面白いし音楽も良いと思いながら観たのですが、私はこの作品に、終始「うしろめたさ」とか「居心地の悪さ」みたいなものも、感じずにはいられませんでした。
仁菜が言う「間違ってない」の中身って
仁菜はずっと、自分たちが「間違ってない」と言います。
仁菜自身の「間違ってない」ポイントは、いじめに立ち向かい、退学せざるを得なくなったことです。
そして、仁菜が証明したかった音楽面での「間違ってない」は、尊敬するギタリストである桃香が、「女性的魅力」を全面に出すバンドの方針に見切りを付けたことの正しさでした。
ガールズバンドが、「音楽性」ではなく、「女性としての美しさ」「性的魅力」で勝負すること。
ヒラヒラした衣装を着たパフォーマンスで、特に男性のファンを集めること。
そんな方針に反発するのは「間違ってない」。
この主張は、音楽ファンならざるアニメファンの私には、かなりつらいものでした。
オタクの消費する「ガールズバンドアニメ」って
私は、劇中で活躍するガールズバンド「トゲナシトゲアリ」の音楽を、魅力的と感じました。
しかし、これは彼女たちの「音楽的能力」を純粋に見たわけではない自覚があります。
- 外部というか裏方の、一流であろうミュージシャンの作詞・作曲・編曲の魅力(これは、音楽の魅力ですね)
- パフォーマーに被せられた「アニメ美少女」の外見的魅力
- アニメ美少女が繰り広げた「虚構の物語」による感情移入
これらを全て統合してようやく、私は『雑踏、僕らの街』や『空白カタルシス』を魅力的に感じたのです。そこには、現実のアイドルが自身の外見的魅力を使って音楽の魅力をアピールするより、遥かに極端な「音楽とは別口の上げ底」が働いています。
仁菜は、女性的魅力に頼ったダイヤモンドダストを「間違っている」としていました。その評価が覆ったとしたら、「女性的魅力ではなく、熱意と実力でもって高品質な音楽を提供している」ことに気付いた終盤です。
私だけでなく多くのアニメオタクは、現実世界にトゲナシトゲアリに相当するガールズバンドが存在しても、曲を聞く機会すらないでしょう。聞くのは「有名」だったり「美形」だったり「話題」だったりで露出が増えていて、さらには「アニメタイアップ」などで感情移入を上乗せしている音楽。
どう考えても「間違っている」方に加担しているのです。
まとめ
ガールズバンドクライは、地元で、愛すべき女の子たちが、素敵な音楽を奏でる、素晴らしい作品でした。
一方で、私が感じたこの愛着は、登場人物が勝ち取りたかった「純粋な音楽的魅力による評価」とはかけ離れたものであり、アニメを見て苦々しい気持ちになるのも止められませんでした。
9/13にチネチッタで行われるライブについては、配信チケットで応援しようか考え中です。
トゲナシトゲアリが、現実世界でも劇中世界でも、幸せでありますように。
(今井士郎)
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